2008-07-30

私の好きな料理本をご紹介します

先日「ほぼ日」のアンケートに答えていて、そういえば料理本の書評というものを昔やったことがあったと思いだした。非常にインターネット初期の頃で、たぶん10年ぐらい前だったんじゃないだろうか。

その後、ある方のご紹介で、非常に有名で、かつ志ある若い料理人たちに慕われている、ほんとうに偉大なシェフたちに何人か取材をさせていただき、それはウェブと雑誌の記事になったりした。

そうそう、これは本当に貴重な機会だったなあと思って、また料理というのは、自分自身が毎日行っていることでもあるので、──で、話はどこへいくのかというと、やっぱりブログに書いたほうがいいんじゃないか、と考えて──というわけで料理ブログというものを始めたのだが、実はこれは案外長続きしなかった。

なぜだろうと思うと、料理なんぞは別にネタには事欠かないのだけれど、やはり自分の中でモチベーションがいまいち不足しているということなのだろうと思います。

料理について私が考えているのは、まず実証的な分野であるということ。その意味では理科の実験室とかとも通じるものがあるわけですね。しかし「音楽」にクラシックもあればジャズも邦楽もあるように、「料理」だけではカテゴリーとして広すぎる。優れた料理人は現実には何らかのバックグラウンド──中華で修業したとか、フレンチで修業したというように──を持っています。それでもっておいしい料理をつくる人たちは、みんなかなり「実証的」なヒトビトなんだけど、では「実験」をやっているのかというと、およそ「おいしいもの」を作ろうとしかしていない。そういう意味でこれはたいへんに「応用的」な分野であって、基礎研究のところはもう掘りがいはなくて、で、どうするか、というところに幅広い取り組みがある。そういうふうに感じます。

料理をそういうふうに見ていくと面白いぞ、そして、そのように考えている人もいるんだぞ、と感じ始めたのはいつかなあ、と思い起こしてみると、この本あたりじゃなかったかな、と思います。手元にあるのは「新装版」ではないほうで、初版が1971年。では当てずっぽうに開いたページから引用。

「肉や野菜を炒めるとき、強火で加熱するのはなぜでしょう?」

なかなかいい質問ですよね。アマゾンで谷山田柊雄 (東京都杉並区)さんという方が「類書とは一線を画した良書」として本書を挙げていらっしゃいましたが、私も同感です。


『「こつ」の科学—調理の疑問に答える』
杉田浩一著 柴田書店 詳細へ

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