2008-07-08

軽井沢、よけいに過ごす時間。



今まであまり意識しなかったのだが、出張で国内のどこかへ行って、駅へ降りて、そのなんというか当然駅の中で用が足りると思っていたことができなかったり、ひどくさびれた看板なんかに目が行ったりして、バスが出るまでに、せっかく来たんだからなんかしようとして手持ちぶさたになってしまったりする時間があって、東京へ帰ってきてから、それらのことを一番よく思いだしたりする。なぜかと考えてみると、つまりどうして私はここへ来ちゃったんだろう、もしここで生まれていてここが私のホームタウンだったら、どういうことになっちゃっただろう、と私は思っているのだ。そこで、それらの初めて見た風景がひどく記憶に残ってしまうことになるんじゃないかと思うのだ。

もし駅前のこの看板が見慣れたものだったら、遅刻かも!と思いながらその脇を駆け抜けていた時期があったとしたら、そのようにしてその風景がいつまでもあるものと思っていたとしたら。

旅先にはこういうどうも「よけいに」過ごすような時間があって、このような幻想が発生しやすいようにできている。……と思っていたら、最近たまに科学者と同道するようになったら──科学者みんながそうだというわけじゃもちろんないんだけれども──彼らの道中というのはどうも点と点を結ぶ直線のように明々白々としていることを知った。つまり彼らはどうも、道ばたで名物のだんごを軒並み売っているのに、売り声にさえ気づかず目的地を目指す傾向があるらしいのである。この理由は簡単で、道ばたには彼らの興味を引くものがないからなのだ。ついでに、もし興味を引くものがあればそれについていつまでも話しているというのも、また彼らなのである。

ただまあ、夏の軽井沢へ来たらふつうは駅前にあるアウトレットのモールへ行くことになっているらしい。そこには主にスポーツ用品のアウトレットモールがずらりと並んでいて、しかもひと区画が大きいので、全体としてはなかなか壮大な景観である。軽井沢には北口と南口があり、アウトレットのモールは南口にある。ちなみに線路の上空には通路が架かっているので、北口と南口は自由に往来できる。その北口寄りからふと見下ろすと、在来線のホームがひっそりと電車を待っているのだった。

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