2008-09-25

製パン技術を楽しむ。

新しい製パン基礎知識
竹谷 光司
パンニュース社

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料理の最大の目的とするところは、たぶんおいしいことであって、科学的だなどと言ってしまうとおいしさが半減してしまうかもしれない。でも、料理には技術を欠かすことができない。もちろんどんな仕事でもそうだと思うけれども、しかし料理の場合は非常に多くの因果関係を積み重ねるし、ものが相手であるし、といった特徴が、実際にはそれと意識されていなくてもベーシックなところで科学的な「手つき」を要請するもののように私には思えるのである。

粉もの屋は粉だらけ、といいながらピザを作ったり、プチパンを焼いてみたりしていた私は、ある日アマゾンで上掲の本を見かけ、躊躇なく購入してしまった。私はなんというか、比較的限定的な本の読み方をする方なので、こういう行動はかなり珍しい。だがそれにはかなりの良書の予感があり、また実際にそうだったのである。

たとえば、第一章「製パン原材料編」の扉の要約を見ただけで、そのすばらしさに、私は、もうかなり文字通り、ノックアウトされてしまった。曰く──

パン作りを1軒の家作りにたとえれば、原材料編は土台作りである。どんな小さな家にもそれは必要であり、まして大きな家にはそれにあった立派な土台がなければならない。土台さえしっかりしていれば、変化の多い毎日の中で、常に一定品質の製品を焼き上げることができ、さらに、新しい材料、機械、あるいはちょっとしたヒントから新製品を開発することもそう難しいことではない。まわり道のように思えるこの道が、実は製パン技術習得へのいちばんの近道である。

そういえば、こんなふうに私は料理の本だけは、書評らしきものを書いて、いい本だよ、と紹介するのがとても好きなのだった! だってたとえばここ以外に、いったいどこでパン作りを1軒の家作りにたとえているのを読めるだろう? しかもそのたとえは正しくて、正当で、まっとうなのだ! そしてもちろんこれだけじゃなくて、採り上げるときりがない、そういう“リョーリ的技術”のエッセンスがたっぷり詰まっているのである。

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