2008-12-31

どんな年でしたか、2008年

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『ようこそ量子』を書くことになった2005年ごろから、優秀な科学者たちと接する機会が増えたのだが、いちばん途惑ったというか、違いを感じたのは、たぶん仕事のしかただったと思う。

大学の先生というのは、ふだんいったい何しているのだろう? と大学の先生でない人は思うに違いない。大学生の経験のある人はなんとなく知っているかもしれない。しかしそれにしてもよくわかんない仕事だよね。そんな感じなんじゃないだろうか。

私の場合、民間で広告という仕事をしていた感覚からすると、正直なところ、どうしてそうなるんだろう、とか、なんでそれでいいんだろう、なんて思うことも多かった。しかし、彼らが(飛躍的に)優秀であることはよくわかる。優秀というのは単に成績がいいのではなくて、難しい問題をわざわざ見つけてはまっさきに解いてしまうスーパーな人たち、という意味である。というわけだからその、一見かなりずれて見えることにも、もしかしたら確固たる理由があるのかもしれない。そう思って、私はしばらく様子を見ることにしたわけだ。

そうは言っても、実際のところ、そこに何か意味のある理由があるとは、あんまり期待していなかった。むしろ彼らは研究においてずばぬけているので、一般の人が手際よくこなすような“簡単な”仕事は(もしかしたら突拍子もなく)ヘタなのかもしれない、と失礼ながら思っていたと振り返る。もちろん、そしてそれは、大間違いだった。

わかるのに時間はかかったけれど、結局彼らのやり方は、実に、まったく正解で、合理的で、たったひとつのまっすぐに冴えたやり方だ、と今では思う。今では、彼らが何か言うたびに、さっそく、なるほどと思えるようになった。

しかもそのような態度なり、ものの見方なり、考え方やアクションの手順といったものは、科学というコンテンツ(中味)そのものとは別に存在するし、異なる分野の科学者でもかなり共通の部分を持っている。つまり、その方法論を採りだして、別に科学でないものにだって適用可能なのであり、しかもたいへん役に立つものだということも次第にわかってきたのである。

2008年、研究の最先端を教えてくださった科学者の皆様、どうもありがとうございました。来年は、科学のコンテンツももちろんだが、そういった発想と活動を支える方法論の部分にもフォーカスできる機会があればと思う。

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