2008-12-02

無関心につけるクスリはないもので。

さいえんす? (角川文庫)
東野 圭吾
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コピーライターが絶対言ってはいけないことのひとつだ「無関心につけるクスリはない」なんて。直ちにコピーライター失格です。だから正しくは「無関心ほど恐ろしいものはない」となる。つまり目に留まらない広告はないも同然という鉄則である。これでやっと広告の話ができる。

サイエンスを広報とか広告とかしようとすると、潜在的読者といかに接点をつくるのかというのが、いつも難問になる。

問題が解けないのは、自分の頭が悪いからに違いない。そこで、東野圭吾著『さいえんす?』(角川文庫)を読んだ。さて工学部出身の著者は、作家になってたいへん驚いたことがあるそうである。若干引用する。

この世界、つまり文系の世界に入って痛感したのは、科学技術について関心を持っているのは、世間のごく一部にすぎなかったということだ。無関心などというレベルではない。全く無知といっていいほどだ。

科学的整合性というものについて、ほかの人は自分ほどこだわらないのだな、と思ったのはこの時だけではない。

──いずれも、東野圭吾『さいえんす?』(角川文庫)より


この驚き、戸惑いは、及ばずながら私にもよくわかる。そしてこのあたりの事情を上手く伝えるのはとても難しいと感じている。

しかし奥付を見ると、この本はすでに11版を数えている、つまり売れている、読まれているということだ。当代随一ともいえるベストセラー作家は、科学技術について無知な多くのひとに、「さいえんす?」のクスリをつけてくれていたのであった。

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