2008-12-13

どんどんお乗りください、というエレベータ。

今日は、エレベータと、科学者の観察癖の話。エレベータとセレンディピティーと言いたいところだけれども、それじゃあのっけからトホホになってしまいそうなので、自粛することにした。

少し前に量子の研究者がやってきたときに、雑談になって
「そういえばここのエレベータ、どんどんお乗りください、って言う?」

──エレベータが、そんなこと言いますか?

と訊いたら、いや確かに言われたというのである。リョーシカは、「言うかも知れない」と言ったあとで「いや一度も聞いたことはない」と言った。「聞いたことはないけれども、そういう状況に遭ったことがなかったのかもしれない」と。

──そういう状況って何ですか?

「人にどんどん乗って欲しい状況。たくさんの階でボタンが押されているとか……」とリョーシカ。

それにしても「どんどんお乗りください」っていう音声を用意するものかなあ、と私はしばらく疑問に思っていた。そうは思うけれども「確かに言った」と科学者が言うのだから、ちょっとやそっとでは彼が間違っている可能性などないだろうとも思われたのである。

それから約4ヵ月ぐらいたった先日、そうなのだ、私は聞いたのだ、「どんどんお乗りください」を。そして突然気がついたのだ──もしこのことをあらかじめきいていなかったら、私はやっぱり「エレベータがどんどんお乗りくださいと言う」ということを見逃し、聞き逃していただろうなと。

一方で、彼ら科学者は往往にして気付くのだ。ひとりは実際に聞いたのだし、リョーシカは自分で断言したとおり、きっと本当に彼女がいるときにエレベータはそう言わなかったのに違いない。

「聞いたよ」と言いに行ったら、リョーシカは言った。「私もその後何回か聞いたよ」

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