2010-03-02

センスが悪いも命取り。(香絵博士の場合)

先日の根本香絵博士の一般講演について、時が経つほど、いろいろと思い当たることが増えてくる昨今。

というわけで、今日の話題は、そのひとつ。
──科学の最先端は、人類がまだ誰もわからないというエッジ(崖)に立って、そこからわかるほう(陸のほう)ではなく、わからないほうへ進むのだ、というのがあった。

ふむふむ。

リョーシ猫(私のことです)的には、いかにも香絵博士らしい発言という感じ。

このようにして「当たり前」と思ってしまうから、またもや「発見」の機会を逃してしまうわけだが、ところが、今日たまたま書架に「科学はわからないから面白い」といった記述を見つけたのがあらたなきっかけとなったのである。

「わからないから面白い」って、そうでもないよなあ、と私は思ったのだ。

わからないというのは、やっぱり大変なことなのであります。どっちかっていうと、わかったほうがおもしろい。

しかし今はそういう話ではなくて、もう一度香絵博士の話を思い出してみましょう。

わからないほうへ行くというのは──いわばフィードフォワードなわけで──何が起こるかわからない。崖から落ちるだけってこともあるし、穴に落ちるってこともある。なにしろわからないんだから。……と、最先端というのは、そういう勇気の要る活動なんだ──と、そういうお話でした。

しかしこのように聴くと、私たちの感覚では、「じゃ、いちかばちか」なんて思ってしまう。

けれども科学では当然ながら「当たりが出ればいい」というのとも違います。だからやっぱりそこで「カン」がよくないといけないんだろうな、と憶測するのであります。

香絵博士のいる理論物理学という分野では、特にアイデアの質が問われるように思われるのも、このことと無関係ではないでしょう。「カン」というか考えの「スジ」というか、つまりセンスがよくないと、落ちるばっかりってことにもなるし、よくないを越えてキケンですらあるかもしれない。

なにしろ、そのわからない方へ進めば──

「たいがいは失敗します」

だそうなので。

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