2010-01-27

「医学と芸術 展」とロボット考古学

そういうわけで石黒先生の考えを本を読んだり、講演を聞いたりして一旦理解してしまうと、その考えが、「リアル社会」のさまざまな(科学的なものに限らず)多くの文化的現象と、怒濤のようにリンクしてしまう、ということが起こる。ちょうどアルスエレクトロニカが企んだように、石黒先生と私、そして読書を通じた本書と読者の方々との対話が「起爆剤」となって、私たちは、現実を、ちょっと未来のほうまで解読できるような視座を獲得できるのである。

というのもこれもまたアルスエレクトロニカが解説してくれているように、石黒教授が生み出すロボットやアンドロイドは、人間の根源的な関心と直接結びついている。つまり、テクノロジーであると同時にアートなのだ。

ここから直ちに思い出されるのは──そう、レオナルド・ダ・ヴィンチであります。

実は森美術館で現在開催中の「医学と芸術 展」には、脳や頭蓋が描かれたダ・ヴィンチの原画が来日している。

医学と芸術展:Imagining a Future for Life and Love
2009年11月28日(土)〜2010年2月28日(日)
ダ・ヴィンチ、円山応挙、デミアン・ハースト、ヤン・ファーブル、フランシス・ベーコン、アンディ・ウォーホル、蜷川実花、やなぎみわ、河鍋暁斎、ヴァルター・シェル
http://www.mori.art.museum/contents/medicine/


この展覧会、イギリス・ウエルカム財団のコレクションから約150点の医学資料や美術作品が展示されているのだそうだ。「Wellcome Library」のホームページはこちら↓



また、この展覧会が示しているような歴史を持つヨーロッパで、人間の根源的な関心がアートとして、一方では医学として追求・発達していったというように読まないと、展覧会はかなり散漫なものになるだろう。言い換えると、展覧会はいちおう年代順の順路になっていたようだけれども、医療の歴史、特に技術史として見るよりは、時代を通じて繰り返し現れる主題に目を向けることで、展覧会のおもしろさが増すだろう。出口ゲートを出る頃には、私は以下の一節を思い出していた。

「意外にも私たちの歴史には古くから、しかも綿々とたくさんのロボットが存在していたことがわかる」(『ロボットは涙を流すか』17ページ)

映画だけではない。展覧会を見るのにもなにかと役立つ『ロボットは涙を流すか』。1月新刊で発売中でございます。

ロボットは涙を流すか
石黒 浩,池谷 瑠絵
PHP研究所

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