2009-07-03

ラムスと科学と最先端


ラムスというのは人名で、ドイツ・ブラウン社の代名詞とも言われるデザイナーです。そして、彼が60、70年代にデザインした商品が、現在も現役で生産されていたりするという、インダストリアル・デザインの鑑のような存在。

という予備知識で、「純粋なる形象ディーター・ラムスの時代—機能主義デザイン再考」@調布市美術館という展覧会を見に行ってきました。

1920年代頃のロシア、ウィーンなどヨーロッパでのデザインのムーブメントから、ブラウン社の歴史などもわかるように構成され、とにかく展示品がまさに空間に配置するために作られたものであるからして、ただ白い空間に置いていくだけでOKという感じではありましたが、無理に「美術品」に見せようともしていないのには好感が持てる展示でした。

淡々と展示されているテレビやオーディオ機器をみていると、ただの函としてのテレビから半世紀って、長いような短いような、複雑な思いもあって。……というのも、こういったムーブメントについては、うっすら知っている世代でもあるからだと思います。

実は先日、科学の書籍の編集を長年手がけていらっしゃる編集者の方と話しているときに、1975年頃に科学ものがよく売れたという話題が出て、そうそう、そのシリーズ本ならばうちにもあった!というので盛り上がったのだったが、その頃の家庭内を振り返ると、なんというか大いなるあこがれのようなものが周囲にあって、その意欲が、かなり本へも向けられていた、といった状況だったような気がする。それは何も科学の本に限らなくて、百科事典とか分厚い漢和辞典とか、もしかしたら、ある程度教養ならなんでもよかったのでは?……いやあ、少なくとも”うち”にはそういうノリがありました。なにしろシステム・シェルフだってあったもん。

さて、そんなことも思い出しながら展覧会を見ていったのですが、順路のおしまいのほうでは、ブラウン社のデザイナーへのインタビューを収めたビデオを流していて、なかなか印象的でした。

──当時ドイツのインダストリアルデザインにはだれも追従できなかった。イタリアンデザインは、まだ理想を追っていた。いやイタリアというのは、ある意味、現在でもそうかもしれない。

──それ以降、家庭は、物だらけになった。その前には何もなかったのに。

それだけ聞くと、なんだ当たり前だ、時代さえはっきりしない、聞き古されたスローガンのようだ──などとつい思ってしまうのだけれども、こっちはノリでも、彼らはマジというコントラストもくっきりとあって。彼らが打ち立てたスタンダードを、「当たり前」として受け取ってしまうと、やはりエッセンスが抜け落ちてしまうのだろうなあ、と思われました。

聞き飽きた!という言葉には耳を貸さず、スタンダードへの意欲を常に燃やし続けること。インダストリアル・デザインってそういうものなんだよ、とホログラムなラムス氏が、こっそり耳打ちするかのようでありました。

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