2009-05-02

思いあふれて、ここに写真の最先端。

写真芸術の現場ー五味彬・横木安良夫 【後編】
配信開始日 : 09.04.24
ジャンル : ドキュメンタリー
http://www.polosonearth.com/VisitorContents/show/16


写真家の水谷充さんが手がけられた渾身のドキュメンタリーが、アップされていました。これに先立ち写真家五味彬氏と横木安良夫氏の「ShINC.Project」で「¥3,000で写真売りましょ、買いましょ展」を開催したと聞いて気になっていたのを、このドキュメンタリービデオで追体験、遅ればせ確認することになった次第。

すばらしいので、とにかくご覧ください!
ネットTV「POLOS on earth」
「写真芸術の現場ー五味彬・横木安良夫 【後編】」


ちなみに、水谷さんのブログはこちら。
写真・映像制作人 水谷充の私的視線
http://mmps-inc.jugem.jp/



以下は私の感想です。

・横木さんという方について、知りたいと思っていた(潜在的にも)ことをきいてくれた、という意味でも、NHKの『現代写真論』(だったかな)以来のクオリティ。またインタビューに答えている横木氏の目が、特に前半はスナップ撮影中とあってハンターになっていて、それが時折見ている者のほうへ向けられる。映像的にもスリリングです。

・現代において、作家としてやっていくためにはどうしたらいいのか? 一番の問題はそれを作家がいまひとつわからないままになってはいないかというところである、というメッセージ。これはこの番組を見た人にとても印象的なポイントのひとつだろう。写真家は、このような他の芸術にも通じる問いについて、特にリアルに感じ、比較的ストレートにリアクトするように思う。

またこの問題、その一方の極には、どのようにしたら(作家を生かす)著作権料が作家にちゃんと入ってくるのか、という問題があると考えられるが、このネットTV番組を見ていて、私はこちらの問題には2つの側面があるのだと気がついた。

側面の1つは、番組(動画コンテンツ)の中で、横木氏が言われている。──作家活動を早くから、収益性はなくても、行うこと。そして収益性については、コマーシャルの仕事や別の職業から得て、写真は作家としてやっていく──ということ。これはつまり、作家・作品と収益性がつながることを目指さないということだ。作家はもうかる仕事じゃありませんよ、というよりは、みんながやりたいと思うような仕事じゃないんだ、ということだろう。何にしても──たとえば科学の研究にしても──それだけの能力を世の中をうまくわたって楽してお金を蓄積することの「ために」使ったら、かなり稼げるとしたって、そんなことは、もともと当然と考えたほうが妥当である。またそれは「自分が好きなことをやっている代償」というよりは、「それをやろうという意志の実現が優先」されていると考えるべきだ。なぜなら「お金を稼ぐ」という目的を当然に最優先させるべきではないからだ。

もう一つの側面は、この番組から遠く離れて、おそらく「職業としての作家」を、(たとえば国や世の中に)認めてもらいたい、という希いのようなものだろう。というのも、ちょうど先日の朝日新聞に、Googleに抗議する谷川俊太郎さんの写真が載っていたのが、これだけを見ると、作品には(作家としての)素晴らしさがあり、この価値への正当な報酬を要求しているように見えるし、実際にそうでもあろうが、同時にこれは国とかGoogleのように巨大な相手と対峙する労働者の闘争のようなものでもあるのかもしれない、と気づいたのだ。谷川氏の写真は私に、井の頭公園の長寿象「はなこ」を思い出させた。むしろ沈黙に近いほど静かな抗議。

・ネットワークの大切さ。とくに同業者やクリエータ同士の。ShINC.のプロジェクトに集まっているのはみんな大御所、大家と言ってよい方ばかりだ。大家でないから、ネットワークでつながるのではない。そして世代によって、同じ問題がちがう形をとる。その中から生まれてくるムーブメントに一番期待しているのは、きっと水谷さんご自身であるに違いない。

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