病院の待合室には、最近そこそこ大きいサイズの液晶テレビが設置されていて、そこに病院用の番組がいろいろと流れている。私はもともとさほどテレビを見る習慣がないので、滅多に見ることもないのだけれども、ふと見てしまったときに目に入ったのが、ウミガメの涙であった。
ウミガメでなく、ワニの涙ならば、うそなき、と相場が決まっている。たしかフランス発の絵本などに採り上げられていて、うろ覚え(なにしろ病院の待合室にいて、今すぐにはネットが使えない)では、助けられて家族のなかで暮らしているのに、ワニであるからして、ふとしたことで人に噛みついてしまい、人は痛い痛い、恩知らずなワニめ!と言うのだが(だったと思うが)、するとワニはごめんなさいといって涙を流すのである。ところがそれはうその涙で、ワニはいっこうに懲りる間もなく、また噛みつくのであろうというわけなのだ。
一方ウミガメの涙というのは──その病院が流している番組によると──カメはかわいそうに浜辺へ上がってたくさんの卵を産むものだから、お産が苦しくて涙を流すのだ、とかいわれるけれども、それはどっこい、うそうそ、なんだそうである。そうではなくて、ウミガメは海水を飲んでいるので、塩分を排出するために「いつも」涙を流しているのだそうだ。──ってのはつまり、鳥が「いつも」糞をしている、という感じだろうか。
だいたい水辺の生き物が涙を流すというのが、うそくさい、というのが、直感的な常識というものなのではないだろうか。ひとにしてみれば「手で水つけたんじゃないの?」というわけだ。ここにうまくはまってしまうところが、この話のおもしろさの種なのかもしれない。
日本語版は画像がなかったので。やっとみつかったフランス語版。
2010-07-28
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